ドッグフードにささみトッピングは危険?! 犬にささみを与える時の注意点

ペットのおやつと言えば『ささみ』、手作りフードと言えば、『ささみ』。

犬にはやっぱり鶏『ささみ』ですよね。もはやペットの食べ物として常識になりつつありますが、何故なんでしょう。

私はひそかに疑問に思っていたのですが、いつからささみばかり食べさせるようになったのでしょう。犬にはささみと誰が決めたのでしょうか。


残りご飯に味噌汁をかけていた昭和時代から、ささみが定番だったわけではないはずです。

動物栄養学を学べば学ぶほど、どうしてささみなのだろうかと???疑問が浮かびます。

皆さんはどうしてささみを選んでいるのでしょうか。

高たんぱく、低脂肪だから?安心の素材だから?犬の食いつきがいいから?

実はささみの栄養バランスは期待するほど良いものではありません。

逆にそれだけを与える事はミネラルの吸収を阻害するリスクすらあるのです。


【ささみのメリットとデメリット】

ささみはおやつや手作りフードの定番ですが、与える事にはいくつかのメリットとデメリットがあります。

まずメリットとしては、他の部位に比べ、脂肪分が圧倒的に少ないという事。そしてたんぱく質が摂取できるという点です。良質なたんぱく質源として人間界でも筋肉系の方の間では広く取り入れられています。


しかし逆にデメリットな面も存在します。中でも一番問題になるのがささみに含まれる栄養素のうち、ミネラルのバランスが非常に悪い事です。このミネラルバランスによって他の栄養素の吸収に影響を与える恐れがあります。たくさんたんぱく質を摂取する為に、毎日ドライフードの上に茹でたささみをトッピングしている。なんて方も多いと思いますが、その行為ちょっと待ったー!!その行為が最も危険なのです。


【ミネラルにはカロリーがない?ミネラルの役割】

たんぱく質や脂質、糖質などはエネルギーとして体を動かす際に必要な栄養素です。車で例えるならば、車体やガソリンです。これがないとまず車として動きません。


ミネラルもそのガソリンになるかというと、残念ながらミネラルはエネルギー(ガソリン)にはなりません。簡単に言い換えるならばカロリーはゼロです。いくら摂取してもカロリーにはならない!ダイエットしている方にとってはなんて素敵な物なのかという感じですね。カロリーにはならないのになぜ体にとって必要なのかというと、歯や骨などの対組織の成分や生体機能の調節の役割理を担っているからです。これも車で例えると小さなネジやバルブ、エンジンオイル等にあたります。これがないと安全に、健康に車を維持する事ができなくなります。その為、カロリーにはならないけれど体にとっては必須の栄養素です。たんぱく質や糖質に比べ体にとっての必要量はかなり少量ですが、ほんの少しでもその効果を発揮する事が出来る為、微量栄養素と呼ばれています。微量ゆえに摂取する量には特に気を付けなければなりません。


【ささみのミネラルバランス】

ミネラルの必要性を知ったところで、最初に述べたささみのミネラルバランスについてもう少し詳しく説明しましょう。

ささみには多くのミネラルが含まれていますが、その中で問題となるのはカルシウムとリンのバランスの悪さです。カルシウムは良く知られている通り、骨や歯を作る栄養素の代表ですね。あまり知られていませんが、リンも歯や骨に関連する栄養素です。この二つは多く摂取すればその分、歯や骨が丈夫になるという単純な物ではありません。カルシウムとリンは複雑な相互作用で結びついており、お互いに影響し合うという特徴を持っています。

相互作用とは、複雑に絡み合った糸でつながっているような感じです。どれか一つの糸を過剰に引っ張ると、予期せぬ他のミネラルに影響を与え、引っ張られて付いてきちゃうようなイメージです。その為、ミネラルは摂取量だけでなく相互作用を考慮したバランスが重要になってきます。


【カルシウムとリンの最適なバランス】

 犬にとって最適なカルシウム(Ca):リン(P)の摂取比率は、1:1~2:1(猫は1:1~3:1)が好ましく、そのバランスが崩れると相互作用による影響が出ます。一例として鶏ささみ(茹で)についてカルシウムとリンの比率を調べ概算したところ、Ca:P=1:48となりリンが多量に含まれている事が分かります。このようにリンが過剰な状態になるとカルシウムの吸収や利用率を下げ、結果的に、歯・骨の正常な発育を阻害して、骨折しやすい状態へと陥ってしまします。


【ドライフードにささみを混ぜてはいけない】

 ささみをドライフードと一緒に与えても同様にカルシウムの吸収が阻害されます。

与えているドライフードが総合栄養食という分類であればドライフード(カリカリのご飯)に含まれているカルシウムとリンはすでに最適な比率になるよう作られています。(分類はパッケージに必ず書いてあるので一度確認してみて下さい。)それのみを食べている場合は、きちんとカルシウムが吸収できるのですが、追加でささみをトッピングしてしまうと一気にリンの過剰摂取となります。

これを毎日続ける行為は大変危険です。犬用のおやつにもささみが多く使われていますので、与えすぎには注意が必要です。


【ささみとの上手な付き合い方】

 今回はあまり知られていないささみのミネラルバランスについてお話ししましたが、ささみやそれに付随するおやつを全く与えてはいけない!毒だ!というわけではありません。ささみやおやつなど、ドライフード以外の食べ物は全体の約20%までに抑える事が大切です。

それ以上の量はドライフードの組成に影響を与えてしまうので、いつも『控えめ』で与える様に心がけておくとよいでしょう。

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