散歩中に人や他の犬に吠えてしまう… ~その原因と対処方法は?~

散歩の時に「人や他の犬を見ると吠えてしまう…」と悩んでいる飼い主さんも多いと思います。散歩は毎日のことなので、愛犬が吠えてしまうと飼い主さん自身が日々の生活に大きなストレスを感じてしまいます。

また、吠えることで散歩に行くことが困難になり、散歩に連れ出す頻度が減ってしまうと、愛犬のストレスもたまり、「過剰に吠える」、「落ちる気がなくなる」などといった問題行動も増えてしまいます。

そこで今回は、愛犬が吠えてしまう原因と適切な対処方法について説明していきます。


散歩中に吠えてしまう原因1 恐怖や警戒心で身を守ろうとしている

散歩中に人や他の犬に吠えてしまう原因の一つは、吠える対象に対して恐怖心や警戒心をもち、自分の身を守るために相手に威嚇をするためです。

散歩中の人や他の犬に対して恐怖心や警戒心を持つようになってしまう理由としては

  • 社会化不足
  • 過去の嫌な経験
  • 犬種の特性
  • 男性ホルモンの影響
  • 散歩中に出会った人や他の犬の仕草や行動

などが挙げられます。


社会化不足

子犬の頃から様々な人や他の犬との関りがないと、成犬になった時にこれらに対して過度な恐怖心や警戒心を抱くようになります。特に生後3週齢から12週齢は社会化期と呼ばれ、成長後の嗜好性や愛着を一番形成しやすく、様々な刺激や場所へも慣らしやすい時期になります。しかし、この時期に家の外を散歩したり多くの人や他の犬との関わりを持たないと、散歩中に恐怖心や警戒心を抱き過剰に吠えるようになってしまいます。

※社会化期の子犬の頃のお散歩の仕方はこちらを参照

子犬のお散歩デビュー。いつからできるの?どうやって始めればいいの?


過去の経験

「知らない人に嫌なことをされた」、「他の犬に吠えられたり咬みつかれたりした」など、愛犬にとって恐怖を感じるような経験をすると、人や他の犬に対して恐怖心や警戒心を抱くようになり、自分の身を守るために過去に嫌な経験をさせられた相手に対して威嚇をして吠えるようになります。


犬種の特性

子犬の頃から社会化教育を行なっていたり、過去に嫌な経験をしたことがなかったりしても、犬種の特性によっては生まれつき警戒心が強い犬もいます。

特に闘犬や護衛犬、番犬を目的として作られた犬種は、縄張り意識や警戒心が強いため、普段の散歩コースで出会う人や他の犬に対して警戒による吠えが出やすい傾向があります。

また、アメリカのペンシルバニア大学の研究者によって開発された、「犬の行動評価と調査の質問票」:c-barq(The Canine Behavioral Assessment & Research Questionnaire)をもちいた、犬種の行動特性に関する研究結果では、日本での飼育頭数が多い「トイプードル」、「ダックスフント」、「チワワ」は、様々な犬種の中でも見知らぬ人や犬に対する恐怖心を持ちやすいことが分かっています。


雄犬のホルモンの影響

男性ホルモンであるテストステロンは、縄張り意識や警戒心を高める作用があります。未去勢の雄は、テストステロンの影響を受けやすいため、散歩中に出会う人や他の犬に警戒しやすくなります。


散歩中に出会った人や他の犬の仕草や行動

愛犬が人や他の犬に対して友好的でも、相手の仕草や行動によって警戒心が高まってしまうことがあります。

 一般的に、犬は「凝視される」、「正面から近づいて来られる」、「騒がしく興奮した様子で近づいてくる/接触される」と警戒心が高まる傾向があります。

 犬好きな人が高い声をあげながら凝視して近づいて来たり、他の犬が興奮した状態で正面から近づいて来たりすると、友好的な犬でも緊張して警戒心が高まり吠えてしまうこともあります。

恐怖心や警戒心によって吠えてしまってもその理由は様々ですが、恐怖心や警戒心を感じている時には、「尻込みをする」、「耳を後ろに傾ける」、「尻尾を下げる/股の間に挟む」などの仕草を見せながら吠えていることが多く見受けられます。


散歩中に吠えてしまう原因2 人や他の犬と触れ合いたい

散歩中に人や他の犬に吠えてしまうもう一つの原因として、恐怖心や警戒心とは逆に、嬉しかったり触れ合いたかったりするために吠えることもあります。

散歩中の人や他の犬を見て過度に興奮するほど嬉しくなったり触れ合いたくなったりする理由としては

  • 社会化不足(人や他の犬との関りが少なく好奇心が強く働く)
  • 人や他の犬と挨拶や合うことが習慣化してしまっている

などが挙げられます。


社会化不足(人や他の犬との関りが少なく好奇心が強く働く)

前述したように、一般的に子犬の頃から様々な人や他の犬との関りがないと、成犬になった時にこれらに対して過度な恐怖心や警戒心を抱くようになりますが、生まれつき好奇心が強い犬は、関わったことのない人や犬に強い好奇心を抱くため、挨拶や触れ合うことができないことがフラストレーションになり吠えることがあります。


人や他の犬と挨拶や触れ合うことが習慣化してしまっている

 また、人や他の犬と出会った際に必ず挨拶や触れ合わせることを習慣化させていると、挨拶や触れ合うことができない場合にフラストレーションが高まり吠えることもあります。

人や他の犬と挨拶や触れ合いたくて吠える場合は、嬉しさのあまり興奮が高い状態なので、尻尾を大きく振ったり、飛び上がったり、甲高い声で鳴くなどの仕草が見られます。


散歩中の吠えを予防する方法

飼い主さんと愛犬の安全を確保する

犬が吠えるときは、ただ吠えるだけではなく対象に向かって飛び掛かろうとすることもあります。警戒心や恐怖心で吠える場合は、自分の身を守ろうとして相手に対して攻撃的になり、時には飛び掛かって咬みついてしまうこともあります。また、挨拶や触れ合いたい場合でも、遊ぶためやかまってもらうために飛びかかろうとすることもあります。

人や他の犬を見た際に飛びかかろうとして引っ張る力が強いと、毎日の散歩が重労働になるだけでなく、飼い主さんが転倒して怪我をしてしまう可能性もあります。また、リードがうっかり離れてしまうと、相手にとびかかって咬みついたり押し倒してしまうことで怪我を負わせてしまったり、通りがかった車やバイクなどに愛犬が轢かれて大けがを負ってしまう能性もあります。

このような事故につながらないためにも、しっかりとリードを持って吠えかかった際に犬の動きをとめなければなりません。しかし、興奮状態の愛犬の引っ張る力は非常に強いため、小型犬といえども容易ではありません。また、首輪などで散歩していると引っ張る力で犬自身の首も締まってしまうため、気管を痛めるなど危険な状態にもなりかねません。

そのため、散歩中の吠えに困っている場合は、リスクマネージメントとして首輪だけでなくハーネスを使用して散歩しましょう。

特に、普通のハーネスだと引っ張る力は軽減しないため、引っ張り防止用のハーネスなどを活用すれば、引っ張られる力を軽減して比較的容易に飛び掛かることを防止することができます。

 散歩中に犬が吠えてしまった際、飼い主さんが余裕をもって対応することが重要になります。様々な事故を防止し、日頃の散歩がストレスにならないようにするうえでも、引っ張り防止用のハーネスは欠かせないアイテムです。

 散歩中に犬が吠えてしまった際、飼い主さんが余裕をもって対応することが重要になります。様々な事故を防止し、日頃の散歩がストレスにならないようにするうえでも、引っ張り防止用のハーネスは欠かせないアイテムです。


警戒心を持ってしまっているケース

散歩中にいろいろなものに対して吠えてしまう犬は、散歩中に見かけるものを警戒している可能性があります。

神経質な性格の犬はとても繊細なので、私たちにはわからない違和感を覚えているのかもしれません。

自分の影や鏡に映る自分の姿に対して吠えてしまうこともあります。

また、自分がマーキングした縄張りに他の犬がいると、警戒して吠え出すことがあります。

そんなときは愛犬を優しく抱きしめて「警戒しなくても大丈夫だよ」と教えてあげましょう。


散歩コースを選ぶ

道幅が狭く人や犬が過密しているような道では、犬の警戒心が強まる傾向があります。また、距離が近くなれば挨拶や触れ合いたい気持ちも強くなり興奮も高まるため、日頃の散歩コースは、他の犬や人と十分に距離をとってすれ違える道幅が広い道や、車の往来が少ない道を選んで歩くようにすれば、警戒心や恐怖心、挨拶や触れ合いたくて興奮する気持ちを軽減することができます。

どうしても狭い道を通らなければならない場合、小型犬であれば抱き上げた状態で大好きなご褒美を与えながら、ご褒美に意識を向けながら回避するようにしましょう。


大好きなご褒美を使って意識を反らす

前述したように、小型犬であれば抱き上げて回避することができますが、大型犬のように抱き上げることができない場合は、手に持ったご褒美を口元に持っていき、舐めさせながらご褒美に意識を向けて回避しましょう。

吠える対象とすれ違う際に、必ず大好きな食べ物を与えることで、食べ物をもらった時のうれしい感情が結び付き、吠える対象への警戒心を和らげることが出来ます。

吠える対象が見えたら、食べ物を口元に持っていきます。この際、すぐに食べ物を与えてしまうと、食べ終わってからすぐに吠える対象に意識が向いてしまうので、吠える対象とすれ違い見えなくなるまで食べ物を舐めさせ続けて歩きます。

コングなどの知育玩具に食べ物を詰めたものを舐めさせると、すれ違うまで継続して与えることが出来ます。また、使う食べ物は固形状のおやつよりも液体状のおやつの方が使いやすいでしょう。

吠えを回避する際に使用する食べ物は、その犬が一番好きな食べ物を使うと高い効果が期待できます。また、日頃から吠えを回避するとき以外は極力使わないようにし、特別感を持つように日ごろから管理しましょう。

愛犬が喜ぶご褒美の選び方や与え方って?


吠えてしまう人や他の犬に慣らす

「社会化不足で吠えてしまうケース」や「過去に怖い経験をしたケース」などの場合は、恐怖心や警戒心で吠えてしまっているため、人や他の犬へ慣らすことで、吠えを軽減することが出来ます。

しかし、一言に慣らすといってもその方法は非常に難しく、散歩中に出会う人や他の犬に協力を仰がなければならないため、飼い主さんだけで練習することはなかなか困難な場合が多いです。

毎日の散歩で吠える経験を続けてしまうと、さらに学習が進んでしまい問題が深刻化するばかりではなく、飼い主さん自身もストレスが溜まってきてしまいます。

そのため、一人で悩み続けることなく、早い段階で専門家に相談をした方が良いでしょう。

しつけ方教室や幼稚園などに通うことで、スムーズに練習を行うことが出来るため、飼い主さんにとっても犬にとっても早い段階で負担を減らすことが出来ます。


人や犬との触れ合う機会を増やす

人や他の犬との関りが少なく、好奇心が強く働くことで興奮して吠えてしまう場合は、日頃から人や他の犬と接する機会を増やす必要があります。しかし、今までの日常の環境で関りを多く持つ機会が持てなかったので、急に接する機会を増やすことは難しいため、このような場合も早い段階で専門家に相談し、しつけ方教室や幼稚園など利用すると良いでしょう。


挨拶や触れ合えないことも教える/飼い主さんの指示で挨拶や触れ合いをさせる

 挨拶や触れ合うことが習慣化してしまって吠える場合は、人や他の犬と出会っても挨拶や触れ合わないこともあることを教えてあげる必要があります。しかし、無理に合わせないようにすると余計興奮して吠えてしまうこともあるため、このような時も大好きなご褒美を与えながら回避して、人や他の犬を見ても挨拶や触れ合わないでご褒美を食べながらすれ違う経験をさせましょう。

 また挨拶や触れ合わせる際にも、愛犬が行きたいからといって引っ張りながらも近づかせるのではなく、飼い主さんの歩調に合わせて近づき、オスワリで待たせてから飼い主さんの合図で挨拶や触れ合わせるようにし、落ち着いた対応ができるように習慣づかせましょう。

散歩中に吠えてしまう原因は様々なため、愛犬がどのケースに当てはまるのかよく観察し、それぞれのケースに合った適切な対応をしてあげましょう。

また吠えがひどく、飼い主さん自身に余裕が持てない状態であれば、すぐに専門家に相談しましょう。

麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。

麻布大学卒業後、人と動物の関係に関する専門家やドッグトレーナーの育成を目指し、株式会社Animal Life Solutionsを設立。犬の飼い主教育を目的としたしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」の企画・運営を行いながら、ドッグトレーナーとしても指導にも携わっている。

2009年には世界的なドッグトレーナーの資格であるCPDT-KAを取得。

スタディ・ドッグ・スクール 代表
株式会社 Animal Life Solutions (ALS)代表取締役社長
日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT)理事長

動物介在教育療法学会(ASAET)理事
CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed)

【スタディ・ドッグ・スクールYouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/user/studydogschool/featured?view_as=subscriber

【犬のしつけ方教室スタディ・ドッグ・スクール HP】
https://www.study-dog-school.com

【犬のしつけ方教室スタディ・ドッグ・スクール Facebook】
https://www.facebook.com/SDShome

【スタディ・ドッグ・スクール ドッグトレーナー育成コース HP】
https://www.sds-petdogtrainer.com

【スタディ・ドッグ・スクール ドッグトレーナー育成コースFacebook】
https://www.facebook.com/sds.petdogtrainer
投稿を作成しました 3

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る