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狂犬病ってなに?
狂犬病は、犬や猫、アライグマ、スカンク、コウモリをはじめすべての哺乳類に感染する可能性がある病気です。
人間にも狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれたり、引っ掻かれたりすると感染してしまう、人と動物の共通感染症で、発症すると現在の医学では治療方法がなく、致死率100%の病気です。
日本では昭和32年以降、狂犬病の発生はありませんが、WHOの報告によると、全世界でおよそ年間55,000人もの人が命を落としていると報告されています。
平成18年、日本人2名がフィリピンへ渡航中に犬に咬まれたことにより狂犬病に感染し、帰国後に発症、死亡した例もあります。
愛犬が感染したら症状は?
犬の場合、狂犬病のウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は、個体差はありますが、一般的に20~60日程度で、平均30日前後です。
犬が狂犬病を発症すると、一般的には狂躁時と麻痺時に分けられ、狂躁時は、神経過敏、狂暴性を示して、みさかいなく咬みつくようになります。
むやみに歩き回り、柱や石などの物体に咬みついたり、地面を無意味に掘り、狼のような遠吠えなどの異常行動をとります。
このため、口の中にけがをすることもあり、血の混ざった泡や唾液を出すようになります。
麻痺時は狂躁時ほどの激しい症状はみられず、診断がつきにくいことがありますが、頭や頸部の筋肉が麻痺します。
麻痺は末端からはじまり、次第に脳に近づきます。また中には、興奮症状が見られず、いきなり麻痺が始まることもありますが最終的には昏睡状態から100%死に至ります。
この両方の症状が経過の中で現れます。
人間に感染するとどうなるの?
発症するかどうかは咬まれた傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などで大きく変わりますが、人間が感染し発症すると、前駆期(2~10日間)には風邪によく似た症状のほか、
咬まれた場所に掻痒感、熱感などの異常感覚がみられ、筋肉の緊張、幻覚、けいれん、嚥下困難などが起きます。次に急性期には不安感、恐水症状、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状現れ、2~7日後には昏睡気に至り、呼吸障害が現れます。
液体を飲むとのどがけいれんを起こし、非常に苦しいため水を怖れるようになります。
これが別名「恐水症」と言われる所以です。
犬の遠吠えのような唸り声をあげ、大量のヨダレをながし、昏睡、呼吸麻痺が起き死亡します。
狂犬病の犬に咬まれたら。
愛犬が狂犬病を発症してしまうと、治療法がなく、安楽死させます。
人が感染した可能性がある場合は、すぐに医師に相談し速やかにワクチン接種による治療を開始する必要があります。
咬んだ犬を捕獲し、2週間観察し狂犬病でないことが判明すると、ワクチン接種を途中で中断することも可能です。狂犬病は、一旦発症したら治療法はなく100%死亡します。
狂犬病予防法について
「狂犬病予防法」は議員立法により1950(昭和25)年8月に公布、同日施行された法律です。
狂犬病の予防及び発生時の処置について、また、犬の狂犬病予防注射の接種義務や犬の登録についてもこの法律で定められています。
1990(平成11)年4月に施行された法改正では、対象となる動物を犬に加えて猫、アライグマ、スカンク、キツネに拡大され、罰則規定も強化されました。
なお、「狂犬病予防法」は厚生労働省の所管ですが、第7条の輸出入にかかる検疫に関する事務は、農林水産大臣の所管とされ、その実務は、動物検疫所が行っています。
狂犬病予防法の一部を紹介します。
・目的と対象の動物について「第2条」
「狂犬病予防法」の目的は、「狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ること」と定められています。
この法律の対象となる動物は犬、猫、アライグマ、キツネ、スカンクで、家畜(ウシ、ウマ、メンヨウ、ヤギ、ブタ、ニワトリ及びアヒル等)は対象外です。
・飼い主の登録「第4条」
犬の所有者は、犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日以内に、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあっては、区長。以下同じ)に犬の登録を申請しなければならない。現在、行政から委託を受けた動物病院でも犬の登録は可能である。
登録すると鑑札が交付され、その鑑札は犬に装着しておかねばならない。
犬の所有者は、犬が死亡した時や住所が変更したときも、30日以内に管轄する市町村に届け出る必要がある。
・狂犬病の予防注射「第5条」
犬の所有者は(所有者以外のものが管理する場合には、その者が)、その犬に、狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせなければならない。予防注射を受けた所有者には、注射済票が交付され、その注射済票は犬に装着しておかねばならない。
・罰則「第27条」
以下の場合、犬の所有者には20万円以下の罰金が科せられる。
・犬の登録の申請をせず、鑑札を犬に着けず、又は届出をしなかった場合。
・犬に予防注射を受けさせず、又は注射済票を着けなかった場合。
・動物の輸出入検疫について
「狂犬病予防法」の第7条には、動物の輸出入検疫に関する項目が設けられており、検疫対象動物は、犬、猫、アライグマ、キツネ及びスカンクとされている。
その検疫に関する事項については、農林水産省令である「犬などの輸出入検疫規則」で規定されており、その実務は、動物検疫所が行っている。
海外への転勤などで犬を一緒に連れて行く予定がある場合や逆に海外から日本へ連れて帰国する場合などは、この輸出入に関する検疫の規則を守らなければならない。
また、出国する場合は渡航先の相手国の法律も確認する必要がある。
狂犬病への油断は禁物
日本は狂犬病の洗浄国です。
ですが、1957(昭和32)年以降国内での狂犬病の発生がないことから、狂犬病に対する意識が薄れ、飼育頭数の増加と相まって狂犬病予防注射の未接種犬は増加し続けています。
また、最近では検疫対象外の野生動物が輸入されたり、犬を乗せたロシア船が日本へ寄港した際に、検疫無しにロシア船から犬が日本へ上陸したりするなど、狂犬病への警戒がより必要になってきています。狂犬病の犬が日本国内へ侵入した場合、その地域の接種率が80%を超えていないと拡散を防げないと言われており、既に憂慮すべき状況にあると考えられます。
国内に狂犬病の犬が侵入してしまった場合、以下のような状況が予測されます。
狂犬病を発症した犬は凶暴化し、次々と人や他の動物を咬み、感染が拡大します。
報告を受けたパトカーや救急車が行きかう中、発生を認めた都道府県知事はただちにそれを公示し、狂犬病予防法に基づき交通網が遮断され、半径5㎞にいる犬には口輪と繋留の命令が出され移動の制限がかかります。全国から狂犬病ワクチンが集められ当該地域の未接種犬に予防員が接種して回る事態になります。他の地域でのワクチンは枯渇し、ワクチンを求めてパニックになる人、犬を見てパニックになる人、日本中が混乱の渦に巻き込まれていくでしょう。
万が一、日本国内に狂犬病が再上陸した場合、犬が人へ狂犬病をうつす感染源になる可能性が一番高くなると考えられます。そのため、できるだけ多くの犬が狂犬病の予防接種を受けておくことは、狂犬病が日本に侵入したときにも、人間への影響を未然に防ぐ手立てとなり、愛犬だけでなく私たちの暮らしや社会を守ることにもなります。
まとめ
狂犬病は本当に恐ろしい病気です。
一度発生してしまうと100%死亡します。
そんな狂犬病を再上陸させないためにも私たち飼い主が予防していかなければいけないのです。
必ず毎年1回狂犬病ワクチンを接種し、狂犬病の無い日本を守っていきましょう。